キッスの二歩前、あいあい傘。

相合傘

二人で一つの傘を共有する行為・態様を、相合い傘(あいあいがさ、合い合い傘、相々傘とも表記)、相傘(あいがさ)、最合い傘(もあいがさ、もやいがさ)という。なにか一つのものを複数人で共用、共有すること、またその様をあらわすことばである「相合」と、「傘」を組合せ、傘を共にするさまを表している。連声して、東京地方や愛知県では、「あいやいがさ」とも発音される。東京式アクセントでは、「か」(か゜)にアクセントを、京阪式アクセントでは二つ目の「い」にアクセントをつける。また、相合傘の別称、もやいがさ(最合い傘)のもやい(催合、最合、持相、摸合、諸合)は、「共有する」、「持ち合う」を意味するハ行四段活用動詞、もやう(催合う)の連用形、名詞化したことばで、何か物事を人と一緒にとり行うことをいう。つまり、催合は、相合と、大体同じ意味であると考えてよい。

雨に濡れないよう互いに肩を寄せあう情景から、しばしば二人が恋愛関係であることを暗示する。また、1920年(大正9年)に発行された『日本大辞典:言泉』(落合直文著、芳賀矢一改修、大倉書店刊)によれば、俚言、俗語として、男女間の情交もさすとしている。男女が行う場合は、身長が女性より高いであろう男性が傘を持ち構える。さらには、雨にぬれるのを厭わず傘を持っていない方の肩を傘から出すことによって、二人で使うには窮屈な傘に場所をつくり、女が雨にうたれてしまうのを避ける、という場面は物語や映画などでよく見られる。前述の川柳の中には、女性側も気を使い、結果両名とも肩を濡らす情景を詠んだものもある。恋愛を主題にした物語においては、恋愛のステップを描く道具として、様々な状況で相合い傘は盛んに使われる。

文学作品

江戸時代以降の文学作品では、二人の異性の親密さを表現する言葉として「相合傘」を用いる用法が多く見られる。以下にその例を挙げる。

  • 江戸時代の川柳や浄瑠璃に、相合傘の表現が見られる。近松門左衛門が1721年(享保6年)に著した『津国女夫池』では「君と淀とが。相合笠の袖と袖。」と表現されている。滑稽本の、式亭三馬著作『浮世風呂』においては、「夫婦とおぼしき者、相合傘(アヒヤイガサ)で、しかも欣然として通る」と表現されている。また、異性と親密になるきっかけとして相合い傘を持ちかける川柳なども散見される。
  • 林不忘の『寛永相合傘』においては、斬り合い共に果てた甚吾と十郎兵衛を指してタイトルに「相合傘」を用いている。
  • 並木五瓶が1807年(文化4年)に著した『俳諧通言』では、「相合傘(アイヤイガサ)是は落書にて女郎芸子の色男と二人りの名を仇書にして傍輩の芸子女郎色事をそやすなり」という表現が見られる。
  • 夏目漱石が1907年(明治40年)に著した『虞美人草』には、白墨で電信柱に書かれた相々傘(アヒアヒガサ)の落書が見られる。
  • 永井荷風の1909年(明治42年)の作品『すみだ川』にも板塀や土蔵の壁に書かれた相々傘(アヒアヒガサ)の落書がでてくる場面が見られ、男女仲を囃すための用法として、あるいは意中の異性との恋愛成就を願う手法としてあえて他者の目に付くように当事者が描くものとして表現されている。
  • 島崎藤村の『千曲川のスケッチ』においては、相合傘を「意気(「粋」の意)なもの」と好意的に評している。

その他

相合傘は絵や落書きでもしばしば表現される。二等辺三角形の下に直線をおろした簡単な傘を描き、直線を柄に見立ててその両側に2人の名前を記したものである。直線は三角形の底辺から引き、三角形を割らない場合と、一番上の頂点から引き、三角形を割る場合の2種類がある。一番上の頂点にハートマークをつけることもある。この落書きは大体、カップルに対する揶揄を狙って書かれる。

また、高知県の郷土玩具に「相合傘人形」というものがある。これは、張り子製のひと組の男女が相合い傘でちょうちんを持って立っている首ふり人形で、江戸時代中期にあった恋物語に取材したという。児童むけの玩具としていささか不向きであるともされる。

故事成語

  • 降らぬ先の傘
  • 破れ傘は日和傘 - 暈の中に星が見えると翌日は晴れるという意味
  • 春の夕焼け傘を持て、秋の夕焼け鎌を研げ

古典

  • 傘回し - 大神楽の技の一つ。

民俗・伝承

  • 傘寿 - 80歳。傘の略字分解すると八十になる事から。
  • からかさ小僧 - 「からかさお化け」ともいわれ、一般には、一つ目に一本足、赤い大きな舌という姿で、古い和傘が化けた物とされる妖怪・付憑神(つくもがみ)の1つ。

比喩表現

  • 雨傘番組 - テレビ・ラジオ等で放送予定のイベントが雨天等の理由により中止・順延した際、当該時間帯に代替番組として放送するために収録された番組。
  • キノコの傘 - 真菌類(キノコ類)の子実体の形状が傘を想像させることから。
  • 核の傘 - 核兵器保有国が非保有国との間で軍事同盟を結び、核保有国のもつ被攻撃抑止力効果を、非保有国にまで及ぼすこと。 その形態が、抑止力を持つ核兵器保有国が非保有国に傘を差しだしているイメージを想像させることから。
  • 日傘効果 - 雲が日光を遮ることにより、地球の気温が下がること。雲を日傘に例えている。
  • ヤブレガサ - キク科の植物(学名はSyneilesis palmata)
  • 中國では,文化水準の高い江南地方で、傘を親しい人に送ったり、めでたい日に贈ることを、禁忌する。これは、中国語で、傘(san3)と離散の散(san3)が同じ音であるためである。
  • イタリア等の地中海沿岸地方の国々では、室内で傘をさすのは不幸を呼び込むと考えており、傘の色柄を見る時でさえ、屋外に出てさすことが好まれる。

忌日

  • 傘雨忌 - 小説家・劇作家・俳人・演出家久保田万太郎の忌日

楽曲

  • 「相合傘」(aiko)
  • 「あいあい傘」(石川さゆり)
  • 「相合傘」(ジッタリン・ジン)
  • 「赤いアンブレラ」(もんた&ブラザーズ)
  • 「雨に咲く傘の花」(欧陽菲菲)
  • 「雨傘」(TOKIO)
  • 「アンブレラ」(アンダーグラフ)
  • 「アンブレラ」(コブクロ)
  • 「umbrella」(Dir en grey)
  • 「アンブレラ」(TRICERATOPS)
  • 「umbrella」(YUI)
  • 「Umbrella」(Rihanna)
  • 「アンブレラ・エンジェル」(おニャン子クラブ)
  • 「傘」(竹仲絵里)
  • 「傘がない」(井上陽水)
  • 「傘クラゲ」(レミオロメン)
  • 「傘の下の君に告ぐ」(Mr.Children)
  • 「傘拍子」(RADWIMPS)
  • 「悲しみの傘」(ゆず)
  • 「この傘をたためば」(槇原敬之)
  • 「白いアンブレラ」(山下達郎)
  • 「日傘 〜japanese beauty〜」(MY LITTLE LOVER)
  • 「ふたり傘」(石原詢子)
  • 「破れ傘」(谷山浩子)
  • 「破れた傘にくちづけを」(斉藤和義)
  • 「雪傘」(工藤静香)
  • 「相合傘」(岡本玲)

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